『1999年の夏休み』






偏愛?!新企画!◇あんましのあたんない邦画劇場◇
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」
----◇第五夜◇金子修介『1999年の夏休み』----



『1999年の夏休み』(1988.03.26公開)

監督 金子修介
製作 岡田 裕/岸 栄司 /脚本 岸田理生 /撮影 高間賢治 /美術 山口 修
音楽監督 柳田ヒロ /プロデューサー 成田尚哉/肥田尚久
編集 冨田 功 /助監督 栃原広昭



「私がまだ何も知らなかったあの年の夏休み。
世界がそれまでとは全く違って見えるようになった。
いや、実は私自身が卵の殻を破って変貌したのであろう。
今でもハッキリと思い出す事ができる。
あの年の夏休み・・・・・
まるでまだ昨日のことのような気がしてならない。」

映画は、このナレーションで始まります。

「1999年の夏休み」は、
萩尾望都の不朽の名作!「トーマの心臓」を原案とした少年たちの映画である。
静かな湖があり、山と深い森に囲まれ、世間から隔絶された全寮制の学院に暮らす少女のように美しい美少年たちが愛しあい、憎みあい、傷つけあいながら生きている。和彦(15)、直人(16)、則夫(14)。夏休み、家に帰る事のできない少年たちには、1人の少年悠の「死」が重くのしかかっていた。
ある日、セミ時雨の中ひとりの少年が外の世界から学院へやってくる。
少年の名は「薫」。
「悠」とウリ二つの「薫」。彼の存在に、3人の「永遠の夏休み」は微かな亀裂を生じ始めてゆく...。

少年を演じているのは少女。少女が少年を演じるという実験的手法が話題を呼んだ。ナイーブで残酷でガラス細工のように繊細な少年の姿は、美少女が演じ声も声優さんが吹き替えたことによって不思議な透明感を生み出しています。
男の子とか女の子とかの性別を越えて、心と心の無垢な触れあいの真実を純粋に描いた傑作です。





原作、萩尾望都の「トーマの心臓」
では舞台はドイツのギムナジウム(高等中学校)という閉鎖された聖域。作品が発表されたのは1974年。
冬の終りの朝ドイツのギムナジウム、シュロッターベッツの生徒トーマ・ヴェルナーが死んだ。ユーリという少年への偏愛故に、思い悩んだトーマ・ヴェルナーが自殺するシーンから物語は始まる。生前トーマの愛を拒絶したユーリは自分がトーマの自殺の原因ではないかと思いつつも動揺をみせることなく優等生を演じ続けていた。

一通の手紙がユリスモール(ユーリ)の元へ届く。
「これが僕の愛、これが僕の心臓の音・・・」
トーマからの最後の手紙、遺書だった。

そしてある日、自殺したトーマにそっくりなエーリクが、トーマが好きだと公言してはばからなかったユーリのもとに現われる。
少年たちの無垢な心がすれ違い、ぶつかり合い、響きあう。揺り動かされたユーリの心が少しずつ温かく溶かされてゆきます。美しい音楽を聴くような作品です。
また、ユーリの秘密、エーリクの家庭問題、オスカーとその父。少しずつ真相が解き明かされていくミステリー的要素があり、ある種の推理小説として読むこともできます。

<この映画の何よりの魅力!思春期前のナイーブな少年役を個性的な4人の少女が演じています。>



<和彦> 大寶智子



<則夫> 深津絵里(当時は水原里絵)



<直人> 中野みゆき



<悠・薫 二役> 宮島依里




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【自作を歩く 金子修介 ~中日新聞】
 
萩尾さんには何度かお会いして原作(トーマの心臓)というより翻案という形で映画化することに納得してもらい、ストーリーの骨組みだけを借り、映画に登場するのは夏休み、寄宿舎に残った四人だけという実験的な作品にした。声も、オーディションで選んだ声優でアテレコした。 何処でもない場所を創作しようとして、外観はこの建物(大倉山記念館)だが、廊下は神田のYMCA、ドアを開けると横浜の別な学校、表へ出ると軽井沢だったりで、十七日しかない撮影期間は連日深夜まで続いた。 少年の言葉を喋っているが、彼らは性のない世界の住人と解釈してほしい。人を初めて好きになる時、人はそこに性を介在させない。それは夏休みのある日、一瞬の出来事だが「永遠でもある、という「詩」のような観念の具現化が、映画の目指した世界である。 この建物は、その分かりにくいかもしれない観念を、強固に支えてくれた。遠い昔に亡くなっている設計者に会ってみたい気がする。
まだ、お礼を言ってないから。

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名サイト! ■日のあたらない邦画劇場■
管理人様(一部上場企業女性管理職さん!)に敬意を表して
◇あんましのあたんない邦画劇場◇
として今晩からシリーズ化していこうかなと思います。

◇第一夜◇「人間って、大きいんかい、小さいんかい・・・」小栗康平『眠る男』

◇第二夜◇♪愛のくらしに少し疲れた あなたとわたし SEXY♪..... 荒井晴彦『身も心も』

◇第三夜◇ジンセイは傷ついたもん勝ち!富樫森の名作『非・バランス』

◇第四夜◇中島丈博『おこげ(OKOGE)』





ekato

1999年をとうに過ぎてしまった、私たちって....何!!
。(´-`).。oO

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